都会を離れた田舎暮らしの楽しみを、喜々として他人に語る人は、まだ本当に風流な暮らしのよさを知らないのです。
また、名声や金もうけの話を聞くことをあからさまに嫌がる人は、まだ名声や利益への欲が残っているのかもしれません。
中国には昔から、功名場裡の生活を嫌って、「帰りなんいざ、田園まさに蕪れなんとす」と、山林に閑居することを願う隠逸生活が存在した。
洪自誠自身もその一人である。
だが、好んで隠逸志向を語るのはまだ本物ではないとするこの述懐には、かれのなかに、もう一人の「さめた」洪自誠がいたように思われてなりません。